SynologyのNASに「OneDrive」や「Googleドライブ」と同様な「Synology Drive」と、また「Googleドキュメント」と同様な「Synology Office」という機能が追加されました。
これを利用すると従来のNASの「個人ホルダ」や「共有フォルダ」ではなく、企業でのドキュメント共有環境が格段に良くなります。
ここではこれらの設置方法や使い方を解説しています。
1.DriveやOfficeの位置づけ
ビジネス分野のグループ共同作業において重要なものはメール、カレンダ、チャット以外にファイル共有があります。
このファイル共有の従来の考え方は下記でした。
①個人毎に個人フォルダを持つ(他人は見れない)
②グループ毎に共有フォルダを持つ(グループ全員がアクセス可能)
また上記フォルダをアクセスする方法には下記の様なのもがありました。
接続方法 | 利用場所 | 解説 |
SMB接続 | LAN/WANのみ | 個人フォルダや共有フォルダをPCにマウンントする |
WebDAV接続 | インターネットも可 | アクセス権を持つ総てのフォルダがアクセス可能 |
上記接続のコンセプトはPCデータを「あたかもPCのローカルファイルの様にNASに保存する」でした。
ここで解説する「Synology Drive」は上記とは異なりPCとNASの個人フォルダを同期させる仕掛けになります。
よってデータはPCにも存在するのが特徴で「OneDrive」や「Googleドライブ」と考え方は同一です。
また「Synology Office」をインストールするとWebインターフェースで使える「ドキュメント(Word)」、「スプレッドシート(Excel)」、「スライド(PowerPoint)」が利用可能になります。
更に個人フォルダの中のデータにもかかわらず、特定ファイルを他のメンバと共有しドキュメントの共同作成/編集もできる様になりました。その結果、従来の共有フォルダの必要性は少し疑問になってきます。
メモ
①「Synology Drive」は「Cloud Station Server」の後継パッケージです。よってこれを利用する為には「Cloud Station Server」をアンインストールする必要があります。
②「Synology Drive」は個人フォルダの中に「Drive」フォルダを作成し、このフォルダをPCとNAS間で同期します。
③個人フォルダの「Drive」フォルダ以外のフォルダをアクセスする場合はWebDAV接続等でアクセスするか、「Drive」フォルダの配下に持っていく必要があります。
移動させる場合は「File Station」で「homeフォルダ」を開いて移動させます。
④共有フォルダを「Drive」から見れるようにする為には「Drive管理コンソール」で指定すれが見れるようになります。
しかしPCからはWebDAV接続等でしか見れません。
理由は簡単で共有フォルダはデータ量も多いので個人PCと同期させる事はナンセンスだからです。
2.NAS側のDriveやOfficeのインストールと設定
2-1.DriveとOfficeのインストール
パッケージセンタから下記アプリケーションをインストールして下さい。
上記パッケージをインストールするとDriveも併せてインストールされます。
以下のアイコンが追加されます。
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またOfficeはDriveの追加機能なのでアイコンは追加されません。
※Officeをインストールをすると+マークをクリックすると赤枠の中のメニュだ追加されます。
管理コンソールは共有フォルダを設定するだけなので説明は省きます。
2-2.Driveの画面の解説と基本設定
Driveを起動すると、下記画面が表示されます。
1.黄色枠 エリア
+マーク:フォルダやファイルの作成プログラム(Office種類)を選択するメニュ
ラベルマーク:ラベルを付ける時に利用します。
共有マーク:他のメンバーとドキュメントを共有する時に使います。
以降、移動、コピー、削除、操作メニュが続きます。
2.青枠 エリア
カテゴリの選択エリアです。
カテゴリ | 説明 |
マイファイル | 個人フォルダの中に作られるDriveフォルダ。 PCには「SynologyDrive」フォルダが作成され、これと同期されます。 |
チームフォルダ | 管理者が設定した共有フォルダ このフォルダはPCとは同期されません。 |
私と共有済み |
他のメンバから共有されたファイル PC上では「Sheard with Me」フォルダになります。 マニュアルで同期をさせるとPCに取り込まれまれ同期されます。 |
別の人と共有済み | 自分が他のメンバと共有したファイル |
最近取得したメール | 変更したファイルの履歴リスト |
評価済み | ★印を付けたドキュメントやフォルダ |
ゴミ箱 | 削除したファイルやフォルダ |
3.黒枠 エリア
選択したカテゴリに属するフォルダやファイルが表示されます。
マイファイルのフォルダ分け(案)
PCアプリケーションで作成したファイルとWebアプリケーションで作成したファイルでは挙動が異なります。
よってこれらを下記の様に別フォルダにして管理する事をお勧めします。
①PCドキュメント
・PCから起動すると、作成したアプリケーションで開きます
・Webから起動すると「ドキュメントビューア」を使って開きます(ドキュメントビューアのインストールが必要です)
②Webドキュメント(Officeドキュメント)
・PCから起動するとWebのDriveにログインして開きます(アプリケーションポータルの設定が必要です)
・Webから起動すると、作成したアプリケーションで開きます。
4.赤枠 エリア
上から下記アイコンが表示されています
①アプリランチャ
MailPluseやChat等のアプリがここから起動できます。
②通知アイコン
共有したドキュメントに対する他のメンバの操作情報が通知されます。
③バックグラウンドタスク
ファイルやフォルダの移動やコピーはバックグラウンドのタスクとして実行されます。
このタスクの実行状況及び結果がここに表示されます。
実行済みのタスクを削除すると、このアイコン自体が非表示になります。
④アカウント※重要
アカウントをクリックして「設定」メニュを開いて下さい。
・プロファイルタブ:画像やニックネーム等を入れます。
・全般タブ
通知は「メール」も「チャット」もチェックを外してください。
メモ
ここにチェックが入っているとドキュメントを共有したり、共有されたユーザが操作する度に通知が実行され煩わしいです。
しかもこの通知内容が判りずらい問題もあります。
通知は自動でなくてもマニュアルで行えますので、この自動通知は邪魔な機能です。
・アプリケーションポータル
この機能はPCからWebドキュメントを開く時に使うURLです。
アプリケーションポータルの設定は「コントロールパネル→アプリケーションポータル」の「Drive」の所を設定します。
これが設定されてない場合は「作成ボタン」が表示され、これをクリックすると上記の設定画面が起動されます。
Driveのアプリケーションポータルの設定方法
Driveのデフォルトポート番号は5000((HTTP), 5001(HTTPS), 6690になります。
よってDSMのポート番号を5000(HTTP), 5001(HTTPS)以外を使っている人は「エイリアス」ではなく「ポート番号」を使う必要があります。
よって私はポート番号10003を使っています。
当然、ルータにも10003をTCPとして設定する必要があります。
3.PC側のDriveのインストールと設定
3-1.PC側にDoriveをインストールする前に
DSMのポート番号をデフォルトとの5000,5001以外を使っている場合は、ルータにDrive接続用のポート番号として「6690」を設定して下さい。
3-2.PC用のDriveプログラムの入手
Synologyのダウンロードセンタのディスクトップユーティリティタブから「Synology Drive Client」をダウンロードするか、下記の方法でプログラムを入手します。
アカウントをクリックすると下記画面が表示されます。
上記の「クライアント→ダウンロードクライアント」を実行します。
下記プログラムがダウンロードされます。
3-3.PC用のDriveプログラムのインストール
ダウンロードしたプログラムをインストールして下さい。
インストールが完了してDriveが起動すると下記画面がでます。
ドメイン名でアクセスする場合は下記になります。
・貴方が取得したDDNS名:6690 ex)nw.myds.me:6690
(DSMのポート番号が5000/5001ならば6690は要りません)
ユーザ名とパスワードを入力して「次へ」で先に進みます。
途中でQuickConnectに切り替えますか?のメッセージがでますが「今ではない」を選択して下さい。
メモ
インストールと設定が完了するとWindowsの「ユーザー¥現在のユーザ名」の下に下記フォルダが作成されます。
「SynologyDrive」はWebのDriveの「マイファイル」と同期されます。
「Shard with me」はWebのDriveの「私と共有済み」のフォルダです。マニュアルで同期させないとファイルは取り込まれません。
一方、PCのデスクトップ画面には下記アイコンが追加されます。
上記アイコンをクリックすると「SynologyDrive(マイファイル)」が開きます。
タスクトレーには下記アイコンが追加されます
上記アイコンをクリックすると各種の設定が行えます。
3-4.タスクトレーアイコン
タスクトレーアイコンをクリックすると下記画面が開きます。
①「SynologyDrive」又は「Shard with me」フォルダが選択できます。
②ドキュメントの共有が発生すると通知が届きます。このエリアの同期アイコンをクリックするとPCにファイルが同期されます。
③WebのDriveが起動されます。
④設定メニュです
グローバル設定を開いて下さい※重要
下記に必ず✔を付けて下さい。
メモ
上記にチェックが入ってないとPCを立ちあがた時にDriveが自動で起動されません。
4.ドキュメント共有の種類
Driveの最大の特徴は個人フォルダに入っているファイルを他人(DSMユーザや第三者)と共有できる事にあります。
4-1.特定のDSMユーザとドキュメントを共有する方法
ドキュメントを選択して下記のアイコンをクリックします。
下記画面が開きます。
①ファイルリンク
Driveドキュメントには総てURLが割り振られます。
このURLを共有相手に送る方法には下記の2種類があります。
・メールファイルリンクをクリックする
Driveのメーラが開きます。ここに必要事項を記入して送信する事ができます。
このメーラは「アカウント→設定」の「電子メールアカウント」タブで設定したメールから送られます。
・クリップボードにURLをコピーする。※推奨
これを自分のメールやチャットにペーストして送ります。
メモ
メールファイルリンクを使ったメールを確認して見てください。あまり判り易いメールとは思えません。
綺麗なドキュメント形式で送る為にはクリップボード経由の方が見やすいです。
②プライバシー設定
デフォルトは「非公開」です。
非公開の場合はここで指定されたDSMユーザだけに権限を与えます。
「ユーザ/グループ」欄で「Back space」キーを挿入してください。
DSMユーザ一覧が表示されます。
ユーザを選択し、権限を設定し+ボタンを挿入すると、このユーザに権限が付与されます。
非公開の場合
権限を持ってないユーザに①でURLを送っても編集できません。
4-2.DSMユーザ全員に権限を与える方法
上図の②のプライバシー設定で下記の何れか?を選択します。
そうすると①でファイルリンクを送られた人はDSMユーザならば、その権限でドキュメントの操作ができる様になります。
4-3.DSMユーザ以外に権限を与える方法
上図の②のプライバシー設定で下記の何れか?を選択します。
そうすると①でファイルリンクを送られた人は全員、その権限でドキュメントの操作ができる様になります。
しかしこれだけでは心配な場合は共有の設定画面の「高度な保護のリンク」タブを開いて下さい。
ここでパスワード保護を行ったり、期間を限定したりする共有方法が指定できます。
5.Web(Office)ドキュメントの操作で覚えておく事
5-1.ドキュメント履歴
Web(Office)ドキュメントには履歴機能があり任意のバージョンに戻す事ができます。
しかし情報を次々に入力しただけでは履歴は作られません。
「ファイル→保存」を挿入すると履歴が保存されます。
また「ファイル→バージョン履歴」から履歴一覧や過去のドキュメントに戻す操作ができます。
メモ
ファイルを過去のバージョンに戻す操作も履歴として残ります。
よって履歴は「保存」または「復元」操作で作成されます。
5-2.ドキュメント共有されたユーザのドキュメント履歴
ドキュメント共有されたユーザも履歴を更新したり、過去のドキュメントにも戻す操作ができます。
メモ
ドキュメント共有されたユーザのメニュには「終了」というメニュが追加されます。
この「終了」は共有を終了させるという意味です。
よってドキュメント管理者側のドキュメント共有画面からこのユーザは削除されます。
5-3.「MS Office」、「 Open Office」、「PDF」 への変換
「ファイル→ダウンロード形式」からWebドキュメントをPCドキュメントに変換する事ができます。
Synology Officeの方がPCのドキュメント作成ツールより機能が低いので、この変換は特に問題ないと思います。
6.PCドキュメントの操作で覚えておく事
6-1.PCドキュメントビュアー
DSMの下記のドキュメントビューアをインストールしておくと「MsOffice」や「OpenOffice」ファイルをWeb画面から見る事ができる様になります。
但し、見れるだけで完全に同じに見えるわけではありません。文字位置等が微妙に異なっています。
6-2.Synology Officeへの変換
PCドキュメントをWebで開くと上部に下記ボタンが表示されています。
上記ボタンを挿入すると、Synology Officeへの変換プログラムが動いて新しいドキュメントが作成されます。
これも変換しただけで、オリジナルとはかなり異なったドキュメントになります。
Synology Officeで新たに作り直す時のお手伝い機能程度に考えておいた方が良いと思います。